別ミルメのブログ

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ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡

最近は音楽の話題が続いたので、意図的に美術の話題を。

オススメの書籍紹介。

 

 

 

《宮下規久朗》

『ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡』

ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡 (光文社新書)

ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡 (光文社新書)

 

 

 

タイトルの“ウォーホル”は言うまでもなく、《アンディ・ウォーホル》を指す。

作品や作風も説明不要なほどメジャーな美術家。

ポップさと軽薄さを纏って、捉えどころのないような言動。

それらの裏側や真意を、著者が分析する。

かなりしっかりと制作のバックグラウンドが記されているので、読後はウォーホルを視る目が変わってしまう。(良きか悪きか)

華麗に美術界を、世界を沸かせた人物といえど、ひとりの人間としての人生はそこまで私たちとかけ離れていたわけではないのかもしれないなと。

個人的にはよりファンとして熱心になってしまった。

 

 

 

分析はウォーホルが生まれてから亡くなるまで、順を追って進められていく。

時間経過に沿って話が展開するので、事実を整理しながら積み重ねていくことが容易になっているし、読みやすい。

ウォーホルのことだけでなく、当時の美術界の潮流や世界の動きも絡めて知ることが出来るので、ウォーホルを中心とした美術史、歴史の軽い解説書としても楽しめるかなと。

 

 

 

キャンベル・スープ缶などに代表される、大衆の生活品をモチーフにした作品を扱うようになった経緯。

同時代に活躍していた《マーク・ロスコ》や《ジャクソン・ポロック》の思想作風へのアンチ的な創作。

誰もが知る有名人の姿を取り扱う意味。

執拗な反復から獲得されるグルーヴや時間的経過の効果。

死・生・食といった、人間、はたまた生物の普遍的で避けられない領域へのぶれないフォーカス。

政治への、冷えた客観性の提示。

キリスト教的な着想、思想。

 

 

 

作品の解説書としてもしっかりと機能しているので、ウォーホルの人生と併せて、これ一冊でかなり詳しくなれると思う。

作品の写真が小さく、モノクロなので、作品そのものは別の本などで予めいろいろ眺めておいたほうがいいかも。