フルクサスとは何か 日常とアートを結びつけた人々
今回は美術書籍のレコメンドを。
『フルクサスとは何か 日常とアートを結びつけた人々』
塩見允枝子
フルクサスとは何か?―日常とアートを結びつけた人々 (Art edge)
- 作者: 塩見允枝子
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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“フルクサス”とは1960年代に興った世界的な芸術運動の一つであるが、本書はその潮流のメンバーであった《塩見允枝子》さんによる実体験や考察を基に記されたものである。
リアルタイムに生まれた思考や作品やエピソードを仔細に綴れるのは密接に関わった本人、塩見さんならでは。
フルクサス全体を解説・紹介する内容でありながらも、本人の芸術家・音楽家としての半生を同時に知ることが出来る。
メンバーとして活動する前夜、自分らしい音楽を模索する学生時代の話、《ナム・ジュン・パイク》との邂逅から始まるニューヨーク生活のあれこれなどなど。
瑞々しく当時のやりとり、ドラマが描かれる。
ご本人の体験をベースに綴られているので、交流のそこまでなかった他のアーティストの話はそこまで割かれていないようなので、完全にフルクサスをより網羅する情報の書籍に比べると偏りがあるかも。(ページの都合上や、かなり削がれたのも大きいとは思うが)
あらゆる先鋭的で思索に満ちた演奏・作品群の、アーティスト本人による解説が読めるのはやはり嬉しい。
コンピュータやハイ・テクノロジーを獲得以後のアートとしての1990年代のフルクサスについてもしっかりとページが割かれているので、時代の流れで加わるもの、変わらないものを見比べるのも面白い。
フルクサスが産み出したアイデアに未接触ならば本書は本当にそのきっかけとして大変オススメ。
形として残る芸術というよりは、まさに流れる(=フルクサス)、動く芸術の緊張感の一瞬を。
必読です。