ポップ・アートとアメリカ版画(熊本県立美術館)
今回は私が行ってきた美術展の報告を。
《熊本県立美術館》にて行われているコレクション展、第Ⅳ期“<特集>ポップ・アートとアメリカ版画”。
詳細は下記。
http://www.museum.pref.kumamoto.jp/event_cal/pub/Detail.aspx?c_id=10&id=21&type=top&trk_kbn=N
県美所蔵のコレクションの中から“ポップ・アートとアメリカ版画”にまつわる品をセレクトし展示する内容となっている。
展示点数的には多くは無いものの、私自身がポップアートが好きなのもあって足を運ぶ動機としては十分だったし、実際満足も出来た。
“ポップアート、ポップ・アート (pop art) は、現代美術の芸術運動のひとつで、大量生産・大量消費社会をテーマとして表現する。雑誌や広告、漫画、報道写真などを素材として扱う。1950年代半ばのイギリスでアメリカ大衆文化の影響の下に誕生したが、1960年代にアメリカ合衆国でロイ・リキテンスタインとアンディ・ウォーホルなどのスター作家が現れ全盛期を迎え、世界的に影響を与えた”。
上記一文にある《ロイ・リキテンスタイン》も《アンディ・ウォーホル》も今回の展示でしっかり楽しむことが出来た。
他の作家の作品も多々あったが、以降は私が気に入っている4者に絞って紹介を進めていく。
どの作家も超メジャーなので、大まかな説明はカット。
作品の画像を貼りたいが、権利上アレかもしれないので、リンクをそっと貼る方式で……。
【1】
《ロイ・リキテンスタイン》
『泣く女』
『船上の女』
『筆触』
……の3点が展示されていた。
美術に微塵も興味の無い時期から作品だけはぼんやりと知っていた。
まさにポップアートな流通!
美術館のホワイトキューブ内でしっかりと管理されている状態で対峙するのは印象が改まって心地良かった。
ストーリー的な前後があってこその漫画だと思うが、リキテンスタインのようにそれを無視しピックアップしたコマの拡大は自由に思考の意志が与えられて面白い。
女性の顔に乗ったドットは印刷の特徴を表す。
『船上の女』に付けられていた解説に、構図や色彩に《ピエト・モンドリアン》の影響がうかがえるかも知れないとあったので、言われてみればそうかもと思ったり。
つまり、直線の画面構成と、鮮やかな原色的発色。
モンドリアンをポップアートとして扱うのも悪くないかも知れない。
『筆触』は漫画的キャラクター造形を展開せず、抽象度が増したタッチとなっている。
より特性を部分拡大したような。
【2】
『ヨゼフ・ボイス』(2パターン)
……の2点が展示されていた。
特有のリピテーションが展開されていてリズムを感じる。
画面分割も律儀に“田”の字になっていて強固な安定感もある。
この2要素が持つ効果は非常に大きい。
サイケ気味な色彩の展開も加わると、いよいよいつまでも眺めていられる……!
やはり好きだ。
【3】
《フランク・ステラ》
『池からの川 Ⅱ』
『ヨーク・ファクトリー Ⅱ』
……の2点が展示されていた。
直線や曲線が基本的に大きく形を変えることなくそのまま画面に展開されている。
その実直さから獲得できるリズム感と安定感が作品の魅力に繋がる。
先に紹介したウォーホルとも共通する部分があるかも知れない。
リズムとカラフルさによる相互作用はポップアートが持つ大きな特性なのかもと、作品を連続して観ることにより印象付けられた。
【4】
《サム・フランシス》
(連作“四つの季節”より)『寒い春』
(連作“四つの季節”より)『夜』
……の2点が展示されていた。
画面に自由にさまざまな色彩が散らされる作風とはまた違った2点がそこにあった。
『寒い春』、『夜』といったタイトルだけあって冷ややかな色合い。
よりオールオーバー的に全体が同じ統制を持った、静かで強固な作品。
それがブロック状に観えたりもして、何故か《ナム・ジュン・パイク》のテレビが積層した作品を思い出してしまったり……。
ここでも等分した画面分割によるリズムが隠れていた。
……そう、何度も繰り返したように、ポップアートには律動と安定が同時に現れる。
これこそ“大量生産・大量消費社会”にそのまま接続されるなと改めて。
安定の律動。
作品、作家を超えて共通したコンセプトが明示されている。