shotahirama 『post punk』
今回は音楽のレコメンドを。
『post punk』
shotahirama
トレイラーは下記。
未聴ならば必聴で。
http://www.youtube.com/watch?v=ZnX77eRN3FI
《shotahirama》さんの(2014年1月時点での)最新作。
1トラック勝負盤。
タイトルが『post punk』と名付けられているが、ロック的なサウンドでは一切無い。
鋭く冷えた電子音楽である。
近作に比べ、よりビートが時間経過を主導する作りとなっている。
かといって、よくあるダンスミュージック的に低音が安定して敷かれている訳でもない。
極微に砕かれたガラス片のように、1秒にも満たない具体音や電子音が、大きく取られた無音の間を非常に速さを持って瞬いてゆく。
ここまで忙しくあらゆる音がフラッシュする様を展開されることはそうないので、非常に驚いてしまった。
無音と、規則的に出ては消えてゆくコラージュ的破線。
荒唐無稽のようだが、この二者が清潔に順序を持って入れ替わることでそこにグルーヴが発生する。
場面によっては無音を押しのけて、“極微に砕かれたガラス片”連中が一挙に密度を持って敷き詰められる。
この時の高揚たるや。
17分強の収録時間を一切減速することなくそのままこの構造で縫い上げてしまう。
強制スライドされる時間。
断続または連続する音によって時間を知覚する概念が強く揺さぶられる。
聴取者の音楽と時間、無音と音のこれまでの認識を一旦破壊してしまうという点では、ポストパンク的姿勢がうかがえるのかなとも。
これまで多く電子音楽作品を聴いてきた訳では無いが、その中でもこういった新鮮な体験を提示してくれるものはそうそう無い。
2014年のモードを捉える1枚として是非手にしていただきたいところ。
ムーブメントにならないかも知れないが、それがhiramaさんの唯一性と作家性にそのまま直結しそうだ。
封入されている《久保正樹》さん執筆によるライナーノーツも読みごたえが大変有る。
hiramaさんのこれまでの音楽の活動履歴もここで振り返ることが出来る。
“これは生ぬるいエレクトロニカサークルには納まるはずのない、かといって頭の大きなアカデミズムからも遠く逸脱したどうにも行儀の悪いオルタナティヴ・エレクトロニクスによる宣戦布告だ”という一文が最高。
製品は1CDなのだが、限定的に購入特典として“Ikue Mori Japan Tour 2013でのライブ音源を収録したCDR”も付属する。
約16分ほどの内容。
上記スタジオ盤との一番大きな差異は、後半、ギター奏者とhiramaさんのセッション的サウンドが展開されていること。
hiramaさんの音もそれまでとは変形し、ノンビートとして空間を満たすものとなる。
一転した静寂。
時を刻むのはギターの断続的な、緩やかなピッキング。
前半の動的な展開とのコントラストが美しい。
実際、当ライブツアーの福岡県での公演に私は足を運んだのだが、この前後の構成は非常に効果的だったように思う。
作品のさらなる詳細と購入などは下記の公式のサイトで。