別ミルメのブログ

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『私の愛、ナムジュン・パイク』

今回は美術書籍のレコメンド。

 

  

 

『私の愛、ナムジュン・パイク

私の愛、ナムジュン・パイク

私の愛、ナムジュン・パイク

 

 
tv buddha by nam june paik - YouTube

 
"Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix" — ナム・ジュン・パイク Nam ...

 “ビデオアートの父”と呼ばれる《ナム・ジュン・パイク》の生涯について綴られた書籍。

彼の妻である《久保田成子》さんがそれを回想する形で文章が進められるというのが先ず何より大きい(彼女もまた芸術家である)。

芸術家としての彼のみならず、生活を共にしたパートナーにしか知ることのできないあらゆるエピソードが克明に写されている。

二人の歩んできた歴史。

勿論、各作品についての解説なども同量にしっかりと記される。

本編としての文章が始まる前にカラーで作品の写真も幾つか掲載されている。

 

 

 

二人の出会い、そして生涯のパートナーとなり制作と生活を共にし、パイクが亡くなるまでを描く中で、当時の同じ時代を生きた他の芸術家とのやりとりがまた面白い。

フルクサスのメンバーとの共同生活の微笑ましさ……。

マルセル・デュシャン》、《ジョン・ケージ》、《カールハインツ・シュトックハウゼン》、《オノ・ヨーコ》さんなど超有名な作家との話題も沢山。

 

 

 

芸術家として華々しく活躍をする一方、生活をするうえでの金策についてのやりくりも生々しく描かれている。

制作資金のみならず、家計のやりくりの大変さもクリアしなければならないのでそういった苦労がかなりあったよう。

 

 

 

また、晩年に病に倒れてからの健康面の克服についてもしっかりと割かれている。

肉体的に制約を受けた後も旺盛に活動が出来たのは妻の支えがあってのこと……。

 

 

 

芸術家同士のカップルということでお互いの創作へのインスピレーションの交感があったことも沢山綴られていて興味深い。

同じビデオアートというフォーマットを選びつつもパイクと夫人とでは作風が異なったりして。

パイク作品とは違った魅力があることに気付かされる。

 

 

 

ひとつの美術史を鮮明に記録した書としても、唯一性ある恋愛の記録としても読める稀有な素晴らしい一冊だと思う。

読後は二人の作品に触れるたび温かい気持ちもよみがえるようになった。