別ミルメのブログ

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アンドロイド版 三人姉妹 熊本県立劇場

今回は私が鑑賞した演劇のレポートを。

2014年8月20日(水)、《熊本県立劇場》にて。

 

 

 

アンドロイド版 三人姉妹

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青年団 アンドロイド版『三人姉妹』【DVD&ネット配信開始!】Android,Robot,PLAY ...

 


平田オリザ&石黒浩 特別番組「アンドロイドは人間の夢を見るか?」舞台三人姉妹 - YouTube

 

 

 

《アントン・チェーホフ》の『三人姉妹』を《平田オリザ》さんの作・演出で、《石黒浩》さんのアンドロイド(ロボット)を加えた内容。

アンドロイドを用いた演劇であるということが先ずの大きなフックであるが、それ以前に私が演劇そのものに疎遠だったので何から何まで新鮮で刺激のある体験ばかりだった。

三人姉妹が特異であるのか、平田オリザさんの作・演出が特異であるのか、アンドロイドが加わったことが特異であるのか分からない、比較対象の無い状態での観劇という特異さ。

 

 

 

観客席は200程で、ほぼ満員。

私の観た回はチケットは完売だったらしい。

本編の始まる前に舞台上をロボット(ロボビーR3) がサービス(?)的にうろついていたのが可愛かったw

本編は1時間40分程。

上演後に平田さんのトーク及び観客からの質問に応えるコーナーがあった(演劇にロボットを用いることへの内容が主、技術的な質問には操作されていた方が応えていた)。

 

 

 

この三人姉妹では舞台が(近未来の?)日本になっており、演者も日本人となっている。

ロボット制作に携わっていた亡き父とその娘三人姉妹。

この家族を中心に話が進められる。

執事がロボットで、家事などを行っている。

いかにもロボット然とした律儀な対応が愛らしい。

ただし、会話自体は非常にスムーズで人間の演者との対話のタイミングが非常に流麗。

ここまで淀みなく対話が出来るとは。

話し終えるのを待って、暫く時間をおいてから人間がそれに合わせるといったもどかしさは一切感じなかった。

ロボットが入るとこういった関心も大きくなる。

人間味を感じさせるような可笑しさも上手く盛り込まれていた。

例示すると、食材を買いに出かけたロボットが別の家庭のロボットと店でばったり会ってしまい、ついつい話し込んでしまったなるエピソードなど。

機械同士ならば通信で済むはずだが、“店でばったり会ってしまい、ついつい話し込む”なる行為は実に人間らしいなと。

しっかり笑いが起きていたし、自分も笑ってしまった。

人間同士の会話を傍で聴いていたロボットがその会話に割り込むタイミングや内容を絶妙に考えている様子も同様。

人間とロボットの差異と共通点が同時に現れる様を観ることで、人間のロボット性・ロボットの人間性が表出していたように思う。

 

 

 

劇中にはこのロボットとは別にもう一体(一人)、造形も人間に近い(ほぼ同じ)アンドロイドと呼ばれるものが登場する。

三人姉妹の三女がそれにあたる。

元からアンドロイドとしているのではなく、人間としていた三女が亡くなった代わりに、記憶やあらゆる身体的データなどを引き継いだアンドロイドが家族とともに生活しているのだ。

こちらは前述したロボットの執事とは違い、ロボット然とした扱いよりもそのままより家族的な接し方が(生前と変わらず)保たれている。

顔や手足の所作は人間に寄せた動きで、移動は車椅子(二足歩行などは暫く先の技術として待つ感じかな)。

この三女と、家族や訪問客との会話の裂け目から色々な展開が表れる事が多かった。

“アンドロイドはつい本音を言ってしまう”と宣言して普通は訊かないような質問を相手に投げかけて困らせてしまったり。

敢えて切り込んで訊いてしまうディスコミュニケーション……。

その度に対話がおかしい(不調)なのでメンテナンスを行うべきだと言われている様が妙に印象に残った。

生前の記憶、過去に大きく囚われている描写も多かった。

トラウマの忘却はアンドロイドには難しいのか。

 

 

 

シリアス寄りな内容かと思いきや、実際には喜劇的な場面も多く、そのふたつの振れ幅が絶妙で心地良いバランスだった。

約2時間弱、飽きずにしっかり楽しむことが出来た。

 

 

 

……と、追記として。

ロボットということで本番時の動作の不具合がいつか出るかとそういった意味でハラハラもしてしまった。

遠隔操作になるために携帯電話などの電波を発する機器の電源を切ることは開演前に特に注意してアナウンスされていた。

劇中、一度だけロボットがもの凄く沈黙を貫いた箇所があり、かなり凝ったそういう演出なのかと思いきや、そうでは無かったらしい。

平田さんが終演後に語ったところによると普通にトラブルで発するべき言葉が出なかったらしい。

まれにこういうことがあるのだとか。

幸い、進行に超重要なセリフでは無かったらしいのでどうにかなったが。

あの無言の溜めは凄かったw

 

 

 

今作以外にも平田さんと石黒さんでロボットを用いた演劇は行われるらしい。

フランツ・カフカ》の『変身』を題材とした作品などは是非観てみたい。

今後もアンドロイド仕様の演劇は観ていこうと思う。

 

 

 

最後にそれらの関連リンクを。

 

 

 

平田オリザ青年団公式ホームページ

http://www.seinendan.org/hirata-oriza

 

知能ロボット学研究室(石黒研究室)

http://www.irl.sys.es.osaka-u.ac.jp/