今回は音楽のレコメンドを。
『Sad Vacation』
shotahirama
《shotahirama》さんのアルバム『Sad Vacation』。
電子音楽的スキンを纏ったフィールドレコーディング、ミュージックコンクレート作品。
2011年3月24日リリース。
詳細なデータや試聴は下記リンク先にて。
http://www.signaldada.com/sadvacation.html
http://shotahirama.bandcamp.com/album/sad-vacation-13tracks-only-digital
“電子音楽的スキンを纏ったフィールドレコーディング、ミュージックコンクレート作品”に『Sad Vacation』(=悲しい休暇?)と名付けるその感覚に先ず惹かれる。
実際にそうである音が分かりやすく鳴っている印象のあるないに関わらず、タイトルも作品の一部として機能している。
具体的な音の構成だが、多量の短時間のトラックが積層されていて面白い。
少数トラックで長時間ではないことに意味が込められている。
42トラックで20分!
次々と速度を持って変わりゆく音の風景。
ビート的な意味ではない“速さ”がここにある。
“track list (Original):
1. surface form driver (0:25)
2. take you there (1:15)
3. things fall apart (0:29)
4. kaos baby (1:30)
5. life is hard (0:39)
6. generators (0:18)
7. brain control (1:10)
8. takashimaya (0:34)
9. keeping it moving (0:28)
10. windy wish trees (0:10)
11. slowly fading (0:21)
12. lost in translation (0:55)
13. boys surface (0:16)
14. all done with mirrors (0:03)
15. guided by voices (0:07)
16. you're eyes only (0:14)
17. you're heads only (0:14)
18. NY state of mind (0:29)
19. moon environment fiction (0:06)
20. London calling (1:41)
21. sad vacation tokyo (0:08)
22. past and collide (0:12)
23. difference between noise and (1:10)
24. sick vacation (0:20)
25. sometime today (0:10)
26. away from the public (0:08)
27. eye of the storm (0:05)
28. how to reform mankind (0:15)
29. tomorrow morning (0:12)
30. again morning (0:10)
31. the river that flows into the sand (0:10)
32. midnight is (0:33)
33. I love u (1:10)
34. as the moon spins around (0:09)
35. vertical form (0:14)
36. you pretend you own this place (0:07)
37. crescent (0:04)
38. keeps coming back (0:17)
39. passing me by (0:16)
40. verses from the abstract and concrete (1:03)
41. body control (0:16)
42. frozen river (1:10)”
どの環境の音を採取したかはトラックタイトルから推測出来て面白い。
そのまま記されているかの確証は無いが……。
“いかにも”なそのまま風景音を転写されているというよりは、抽象的視点で選択がなされているように感じた。
分かり易くデパート従業員(?)の「いらっしゃいませ」と挨拶する声や、小鳥の鳴き声、幼児の声など、例外的に鮮明に表れるものもコントラストとして活きる。
その二者のバランス。
前者のクールなコンポジションに、後者のややユーモアさが時々挟まれるのが絶妙。
トラックの移動を繋ぐ編集も個人的に素晴らしく感じた。
ノンストップに、シームレスに流さず、トラックの前後にはしっかりと無音がとられている。
この数秒の無音が意識と風景と音がジャンプできる空間となっている。
そして本編ラストのトラック(42トラック目)“frozen river”の最後には今までよりも多目に無音が敷かれている。
これは聴取者の今いる環境音を聴かせる試みでは無いかと勝手に汲み取ってしまった。
あまり言いたくないが、《ジョン・ケージ》の“4分33秒”的な。
最後のピースはこちらにより可変する。
音が風景を作る。
入れ替える事も出来る。
風景が音を作る。
非常に徹頭徹尾コンセプトを感じられる強度ある作りに大変満足できた。
hiramaさん、今後も要注目の作家である。
新譜のレコメンドも近日。
『post punk』。