今回は音楽のレコメンドを。
mulllr
『WORKERS』
《mulllr》さんのアルバム『WORKERS』。
作家名のmulllrは“ミュラー”と読む。
この作品以前もいくつか発表された音源があるようだが、私がきちんと聴き込んだ作品はこちらのみ。
過去作品との比較などは行えないが、それはさておきこちらの作品が素晴らしかったのでおすすめしたい。
今作に関する作家へのインタビュー記事があるのでそちらも併せて読んでいただきたい。
下記リンク。
作家の意図として、踊れる作風へ指向性を持たせたらしいのだが、個人的には微塵も踊れなかった。
この踊れないということは微塵も批判ではなく、踊れないビートものも踊れないビートとして楽しめるのでそこは受け手の勝手な受け取りとして。
ビートは密に終始鳴り続けている状況で踊らないというミスマッチを電子音楽のビートものは楽しむことが出来ると思う。
作家のコンセプトから外れた聴取法かも知れないがそれはそれで楽しめる。
“「作り手の文脈よりも受け手の解釈のユニークさの方がずっと重要と考えたい」”とのコメント通りに私は楽しんでいる。
全21トラック収録の今作だが、音としての統一感はしっかりとあり、コンセプトアルバムとして一貫性のある素晴らしいレイアウトだった。
試聴出来る数トラックのみで終えず、是非ともアルバムを通して聴いていただきたい。
その21トラックの流れ、構成なのだが、基本的にかなりミニマルな印象を受ける。
1〜15トラックと16〜21トラックで大きく雰囲気が分割出来ると思う。
1〜15トラックはひたすら類似した鋭い電子音の打音が密に配置され続ける。
この“このひたすら類似した”という形容はマンネリ的な意味では無く、ミニマリズム的な意味として捉えられる。
またはオールオーバー。
類似はしているが細かな差異があるのでその変化を聴取者が鋭敏に感得する。
正にミニマルミュージック的な音楽の楽しみ方ではないかと。
基本的に鋭い電子音の打音が鳴るのみで他の音があまり足されないのでその一点にひたすら集中することとなる。
長時間の反復により特有の陶酔感が獲得される。
そして16トラック目あたりからやっと(やっとw)別の展開が現れる。
例えば声ネタが加わるなど、音の複層化が始まる。
声ネタといっても歌唱やリーディングではないので抽象性は保たれている。
終始密だった打音もやや間隔が拡がり静けさが見えてくるようになる。
アンビエント的な静けさと打音の忙しさが同時に展開する奇妙さが面白い。
1〜15トラックとのコントラストがこうやって強く活きる。
1〜15トラックと16〜21トラックで引き立たせ合う構成は美しい。
電子音楽の変わったビートものとしてかなり魅力的な作品だと思う。
こちらの作品と併せて聴いたり比較しながら聴くと楽しめそうな他の作家の作品も紹介したい。
類似性のあるなしはともかく、近いラインとして想起してしまったものをいくつか。
shotahirama
『post punk』
shotahirama "post punk" - trailer, short ver
《shotahirama》さんはこちらの作品に限らず、近作は電子音楽の変わったビートものとして面白いと思う。
『WORKERS』と比べると打音の感覚が大きめなので、スカスカ感を楽しみたいのならばこちらを。
マーク・フェル
『multistability』
《マーク・フェル》は電子音楽の変わったビートものとして清涼感が増した感じ。
『supercodex』
Ryoji Ikeda - Supercodex live Roma 2015
《池田亮司》さんのアルバム『supercodex』も終盤から大きく展開があるので構成的にも近いかもしれない。