今回は音楽のレコメンドを。
『ATAK018 Soundtrack for Memories of Origin Hiroshi Sugimoto』

ATAK018 Soundtrack for Memories of Origin Hiroshi Sugimoto
- アーティスト: Keiichiro Shibuya
- 出版社/メーカー: ATAK
- 発売日: 2012/04/25
- メディア: CD
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Lightning Fields Keiichiro Shibuya - YouTube
《渋谷慶一郎》さんの2012年リリースのアルバム。
おおまかにはピアノの静謐な演奏で主に構成され、コンピューターで様々な時間編集が加えられたもの。
現代美術家《杉本博司》さんを追ったドキュメンタリー映画『はじまりの記憶 杉本博司』へのサウンドトラックとして捧げられてもいるが、独立した渋谷さんの作品としてこれだけでも楽しむことが出来る(オムニバス盤的なものではないので)。
アルバムジャケットに起用されている写真は杉本さんの作品だし、トラックタイトルも杉本さんの作品タイトルと呼応している。
透過性の高い両者の共通点がごく自然に近接しているなと。
実際、映画で映像と音楽が折り重なって流れる様子は非常に親和性が高かった。
人類の起源まで遡るような雄大な時間をテーマに扱った杉本さんの作品に渋谷さんがそれを汲み取るようにコンセプチュアルに本作『ATAK018』ではエディットが施されている。
ピアノから落とされた音の滴が無限に伸びていくかのように、また、無限に凍結するかのように時間の操作がコンピューターで施されている。
両者(杉本/渋谷)は“時間”にフォーカスしている。
美術と時間。
音楽と時間。
人類と時間。
始まりも終わりも区切ってしまう要素。
生も死も内包された大切な要素。
ピアノの打鍵から空間の果てまで伸びてゆく音。
無限に伸びていってしまうような強力なサスティン。
それが却って静寂を生む。
抑制された動から静を見出す。
杉本さんは日本古来の美(意識)を非常に大切にされているが、渋谷さんの今回のピアノからもそれを感じ取ることが出来る。
分かりやすいオリエンタリズムとかの意味では無く、もっと繊細な……。
再度具体的な音の話へ。
音がかなり間引かれたような音数の少ない緊張感あるトラックばかりではなく、メロウさを大胆に展開した優しいトラックも収録されている。
そのふたつの曲調のコントラストがまた美しい。
イヤホンやヘッドホンで聴くとより分かりやすいが、ピアノ演奏時の打鍵以外の音が拾って残されているのがささやかでいて存在感がある。
ライブレコーディング的で、渋谷さんが音の向こうで息づいているような……。
Memories of Origin Keiichiro Shibuya - YouTube
映画も本当オススメなので関連リンクを幾つか。
映画『はじまりの記憶 杉本博司』公式サイト