今回は美術書籍のレコメンド。
『アートの起源』

- 作者: 杉本博司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: 単行本
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現代美術家《杉本博司》さんによる自身の作品の制作のエピソードや解説、及び日本の古美術への思索を綴った書籍。
これを手に取る以前から杉本さんの作品が好きで、色々と鑑賞はしてきたが、本人による自作や美術全般への言及にも触れてみたいと思い読んでみた。
表紙に採用されている『放電場』に先ずうっとり。
ページ内部にもカラーで大きく作品の写真が沢山載っているのでビジュアルブックとしても大いに楽しめる。
作品制作の着想のスケールが、人類史を遡り、人が人になる以前、そしてそこから現代にいたるまでの大変長い尺で捉えられているのが良く分かる。
時間、歴史が杉本作品の骨子だなと強く再度認識。
祖先が歩んできたであろう地球の記憶にまでアクセスする思考のチャンネルが発露する。
個人史なる枝葉から、人類全体の共通の記憶へと。
近代の科学や宗教への接近も同様に行われる。
アートの起源と生命の起源は同時に萌芽する。
西洋などの領域には見当たりにくい日本特有の精神の豊かさに気づかされる。
杉本さんが日本をこよなく愛している雰囲気が大変伝わる。
《千利休》と《マルセル・デュシャン》の相似点を見出し、二者を結ぶ発想は大変面白かった。
「アートとは、いつの世にあっても、新しい価値を創造する、または、捏造するという行為なのです」。
巻末には人類学者の《中沢新一》さんとの対談が収録されており、こちらも本編とは違った趣向で杉本さんの美術史観、歴史観を得ることが出来る。
お二人の話題がどんどん博識さを備えて移動していく様が面白かった。
数年単位であらゆる動向を見るミクロ的視点ではなく、数千年数万年、更にはそれ以上のスケールで美術や歴史を捉える意味。
ここでも時間の尺度を見る重要性がフォーカスされる。
そして更にまた同様に日本ならではの美意識も。
杉本さんの著作はこれ以外にも沢山あるので、私はそちらも引き続き読んでみようと思う。
杉本さんを今の時点であまり知らない人は予め作品を幾つか鑑賞した上で読むのがやはりオススメ。
ドキュメンタリー映画も制作されているので、そちらも併せて。
下記。
『はじまりの記憶 杉本博司』
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- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/04/27
- メディア: DVD
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個人的には音楽担当が《渋谷慶一郎》さんなのが嬉しいところ。